~スマートフォン利用状況を測る客観的な指標を定義し、医療機関での治療などに活用~
- KDDI株式会社
- 株式会社KDDI総合研究所
- 国立大学法人東京医科歯科大学
2020年8月25日
KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 高橋 誠、以下 KDDI)、株式会社KDDI総合研究所 (本社: 埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長: 中村 元、以下 KDDI総合研究所)、国立大学法人東京医科歯科大学 (本社: 東京都文京区、学長: 田中 雄二郎、以下 東京医科歯科大学) は、東京医科歯科大学のネット依存外来の患者に対する実態調査を通じて、「スマホ依存」(注1) の調査と解明を行う共同研究 (以下 本共同研究) を2020年8月25日に開始しました。
<本共同研究イメージ>
本共同研究では、従来の患者への主観的なヒアリングに、スマートフォンの利用状況など客観的な各種ログデータを組み合わせ、患者のスマートフォンの利用状況を測るための客観的な指標を定義し、患者ご本人や医師とも共有することで、医療機関での治療や治療効果の検証などへの活用を目指します。また、本共同研究の成果やデータの分析結果をもとに、「スマホ依存」の改善・予防アプリの開発にも活かします。
東京医科歯科大学 精神科教授 高橋 英彦は、次のように述べています。
「スマートフォンやインターネットは非常に便利なものですが、いつでも気軽に使えるが故に、それらが生活の中心となるばかりではなく、本来やるべきことがおろそかとなり、学業や仕事、家庭に悪影響を及ぼしている方がいらっしゃいます。生活必需品であるからこそ治療が難しく、またその病態や、有効な治療、予後に関する研究は十分とは言えません。今回、KDDIとKDDI総合研究所が持つ技術力と、当院の臨床経験を組み合わせ、スマートフォンやインターネットの使用障害に関する病態解明、治療への応用を行いたいと考えています。」
3者は、本共同研究を通じて、誰もが適切にスマートフォンを利用できる安心で豊かなデジタル社会の実現を目指します。
詳細は別紙をご参照ください。
<別紙>
■背景
1. これまでの取り組み
- KDDIは、「KDDI Sustainable Action」の「心をつなぐ~安心で豊かなデジタル社会構築~」に基づき、「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」などの啓発活動に取り組んでいます。また、KDDI総合研究所は、近年の青少年のスマートフォン・インターネットの利用が長時間化する傾向 (注2) も踏まえ、2016年度からスマートフォンの使い過ぎによる影響の調査・研究を行っています。さらに、KDDIとKDDI総合研究所は「スマホ依存」に関する調査・研究を加速させるため、2020年7月に脳神経科学やAIを活用した「スマホ依存」に関する共同研究も開始 (注3) しました。
- 東京医科歯科大学は、ネット依存の専門外来を2019年度に立ち上げ、ゲーム障害の方を中心に入院治療、外来治療、当事者プログラム、家族支援プログラムなど、ネット依存の診療に取り組んでいます。また最近では、新型コロナウイルス感染症の影響によるスマートフォンやインターネットの利用増加などで、ネット依存外来への問い合わせも新型コロナウイルス感染症の流行前と比べ10倍近くに増加しており、診療体制を拡充させています。
2. 課題
- KDDIとKDDI総合研究所は、「スマホ依存」の実態解明や発生メカニズムなど、「スマホ依存」の理解を深めるためには、健常者を中心とした大規模の調査だけでなく、「スマホ依存」の問題で現実に困っている方に対して直接、スマートフォンの利用状況を調査する必要があると考えており、特に実際に患者ご本人の診断治療を行っている医療機関と連携することについて検討していました。
- 東京医科歯科大学では、ネット依存の診断および治療のために必要な生活の記録やスマートフォンの利用状況などを患者ご本人からヒアリングしています。一方で、ヒアリングの内容が患者ご本人の主観的な回答によるため、実際の状況を正確にとらえることが難しく、適切な治療や治療効果の評価のためにスマートフォンの利用状況などの客観的で細やかな情報を取得する必要があり、その取得方法について検討していました。
■共同研究について
1. 本共同研究の概要
- このたび、KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学の3者は、それぞれの課題の解決に向けて共同で調査・研究を行うことに合意しました。本共同研究では、「スマホ依存」の問題で現実に困っている方のスマートフォンやインターネットの利用実態の解明、利用状況を把握するための客観的な指標のほか、客観的に数値化した情報を医師とも共有することで、病態解明、治療および、治療効果の検証に活かすことを目指します。
- なお、2021年度以降、共同研究の成果やデータの分析結果をもとに、「スマホ依存」の改善・予防アプリの開発にも活かします。
2. 調査方法
- 2020年8月から東京医科歯科大学のネット依存外来を受診する方のうち、本共同研究への参加を承諾された方 (数十名程度を予定) に対し、「スマホ依存」に関するアンケートおよび、研究用アプリでの利用状況の記録を行います。
- 承諾した参加者は、外来の期間 (ベースライン) 、治療期間 (介入期間)、予後 (フォローアップ) の期間にわたって、そのアプリを使用します。また最後に再度アンケートの回答を行います。
- アンケートや収集した利用状況の記録 (利用ログ) をもとに、アンケートと利用ログとの整合性や、「スマホ依存」の問題で現実に困っている方の使用パターンを分析し、またその結果を治療や治療改善効果の検証にも活用します。
- なお、東京医科歯科大学のほか、大石クリニック、成城墨岡クリニックなどの複数の医療機関とも協力し、ネット依存外来などの患者に対してスマートフォンの利用に関する調査を進めます。
3. 役割
KDDI KDDI総合研究所 |
- スマートフォンの利用状況などを記録する研究用アプリの提供
- 収集されたデータに基づくスマートフォンの利用実態の分析および、客観的な指標化の検討など
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東京医科歯科大学 |
- 医療現場での検査・診断・治療
- 倫理審査手続き
- ネット依存外来患者への研究への協力依頼
- 数値化されたスマートフォンの利用状況の治療などへの活用の検証など
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(参考)
■これまでの「スマホ依存」に対する取り組み
2016年3月4日 KDDI総合研究所ニュースリリース
中高生のスマホ依存を改善するホームアプリ 「勉強うながしホーム」を開発
~勉強モードへスイッチオン~
2019年7月30日 KDDI総合研究所ニュースリリース
ふじみ野市でのICTを活用した住民参加型実証実験の開始について
~人がつながる豊かで住み続けたいまちを目指して~
2020年7月10日 KDDI、KDDI総合研究所ニュースリリース
KDDI、KDDI総合研究所、ATR、XNef、脳神経科学とAIを活用した「スマホ依存」に関する共同研究を開始
~「スマホ依存」の実態調査・解明と、2024年度中の改善・予防スマートフォンアプリの実用化を目指す~
■各社概要
■KDDIの取り組み
KDDIは、これからも事業を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。このたびの取り組みは、「心をつなぐ~安心で豊かなデジタル社会構築~」に該当します。