NTT東西による光アクセスの「サービス卸」提供についての要望書の提出について

このページを印刷する

要望書

平成26年6月10日

総務省 総合通信基盤局
電気通信事業部長 安藤友裕 殿

KDDI株式会社
代表取締役社長 田中 孝司

NTT東西による光アクセスの「サービス卸」提供について

弊社は、本年4月15日の総務省情報通信審議会「2020-ICT基盤政策特別部会」及び「基本政策委員会」事業者ヒアリングにおいて、ボトルネック設備を保有する第一種指定電気通信事業者による卸取引は、スケールメリットによって卸サービスの価格等、市場を完全に支配することになり、競争事業者の設備投資インセンティブが損なわれる恐れがあること、NTT東西が、光サービスをNTTグループ内の事業者に卸した場合、提供条件が不透明になり、競争事業者との同等性が確保できなくなることから、卸取引の禁止について意見表明しました。また、本年5月13日にNTTが発表した光アクセスの「サービス卸」について、各地域のCATV事業者等及び固定通信事業者222団体も、本年6月5日、総務省に要望書を提出し、電気通信事業法やNTT法の潜脱の観点、NTTグループの実質的な再統合・一体化の観点、設備競争への重大な影響の観点から、「サービス卸」料金を認可制とする等の公正競争を担保するための制度的措置を講じ、これらの制度的措置が講じられるまでの間は「サービス卸」を提供させないよう要望している状況となっています。

【政府系特殊法人としてのNTT】
NTTは旧国営事業者として、NTT法により政府出資を受ける特殊法人であり、その100%子会社として同法の規律対象であるNTT東西は、歴史的経緯により公社時代からボトルネック設備と顧客基盤を引き継ぐことにより固定市場で圧倒的なシェアを持つドミナント事業者です。こうしたNTTの特殊性とドミナント性を踏まえ、公正競争を促進するため、NTTからのNTTドコモの分離や、NTT東西とNTTコミュニケーションズの分離・分割を行ってきたところです。NTTグループは、既にNTTファイナンスによるNTTグループの請求業務統合 (2012年7月1日開始) を実施するなどグループ一体的事業運営を進めている中で、NTT鵜浦社長は、光アクセスの「サービス卸」の提供と併せた人的リソースの再配置や組織改編も示唆しました。今後、NTT東西が光アクセスの「サービス卸」をNTTドコモやNTTコミュニケーションズなどのグループ会社に対して提供しつつ、グループ連携を強化すれば、これまでの分離・分割の趣旨を蔑ろにすることになります。特にNTTグループの営業機能の統合が進むと、NTTグループが保有する1億3,000万件を超える巨大な顧客基盤を共用して市場を囲い込むことが可能となり、競争が後退することは避けられないと考えます。

政府が出資する特殊法人が市場において主要な地位を占めることについては、競争の進展度合いを判断する上での大きな指標となっており、OECDが発表した市場開放度合いにおいても、日本は電気通信分野において加盟40か国中で32位と低迷した要因として、NTTが政府出資を受け入れていることを指摘しています。政府系事業者が固定・携帯の両市場において未だに1位である現状において、更にその政府系事業者の市場支配力を高めるNTT東西の光アクセス「サービス卸」を通じたNTTグループの一体化を黙認することは、NTTという特殊会社が民業を圧迫することになり、2020年代に向けて目指すべき、事業者間の競争や積極的なインフラ投資によるICT基盤の高度化、低廉化、強靭化の達成が困難になると考えます。

【NTTの戦略変更を踏まえた議論】
卸取引の在り方については、上記審議会及び特別部会、基本政策委員会における論点として、設備競争とサービス競争双方の促進を踏まえた光ファイバ等の超高速ブロードバンド基盤の競争政策がどうあるべきか、検討事項にあげられているところですが、総務省における具体的議論が進む前にNTTが光アクセスの「サービス卸」の提供を発表し、既成事実化しようとする行為は、審議会の存在を蔑ろにするものであり、極めて問題があるものと考えます。

これに対して、新藤総務大臣は、「通信事業の分野においては、公正競争の確保ということは重要なポイント。光ファイバについては、回線の78%をNTT東西が持っている状態において、新たなサービスをすることに関しては公正競争の確保の留意が必要。」(2014年5月13日 新藤総務大臣閣議後記者会見) との趣旨の発言をしており、速やかにNTTに具体的な事業内容や方針の説明を求め、公正競争上の問題がないか検証すべきです。NTTは、4月15日の事業者ヒアリング後に光アクセスの「サービス卸」を発表したことから、検討の前提となる電気通信市場を取り巻く状況は大きく変化しており、改めて審議会や基本政策委員会において関係事業者の意見を幅広く聞き、公正な競争環境の在り方について再検討する必要があると考えます。

以上のとおり、NTT東西の光アクセスの「サービス卸」は、設備競争に重大な悪影響を及ぼし、巨大な特殊法人であるNTTの実質的な再統合・一体化につながる点で大きな問題があります。ブロードバンド普及の推進にあたっては、競争を通じた技術革新や新たなサービスの成果を国民にもたらせるよう、これまで機能してきた設備競争を損なわないように留意しながら、サービス競争とバランスよく組み合わせて競争を促進していく必要があります。電気通信事業法第1条「この法律は、電気通信事業の公共性にかんがみ、その運営を適正かつ合理的なものとするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする。」にも明記されているとおり、総務省におかれましては、NTT東西による光アクセスの「サービス卸」がこれまで機能してきた競争環境を阻害しないか厳正に検証し、多様な事業者による公正な競争を促進するため、禁止行為規制の在り方を含めた検討を十分に行い、必要な制度的措置を講じて頂くよう要望します。


  • ニュースリリースに記載された情報は、発表日現在のものです。
    商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。