Starlinkを活用した南極からの8K映像リアルタイム伝送に成功

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~南極地域観測隊員の作業のDXや情報発信強化を目指して~

  • KDDI株式会社
  • 株式会社KDDI総合研究所
  • 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所

2024年2月26日

KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下 KDDI総合研究所)と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所(所長:野木 義史、以下 極地研)は2024年2月13日、南極昭和基地とKDDI総合研究所本社の間で、Starlink衛星通信回線を用いた8K映像のリアルタイム伝送の実証実験(以下 本実証)に成功しました。
Starlinkは昭和基地周辺でも高速かつ低遅延なネットワークを利用できます。また、Starlinkのユーザーターミナル(アンテナ)の可搬性を生かすことで(該当項目へジャンプします注1)、昭和基地およびその周辺だけでなく、より広範囲での作業に活用できるようになります。そのため、南極大陸の自然観測や、昭和基地から離れた場所での観測隊員と国内担当者とのリアルタイムコミュニケーションに基づく作業効率化など、さまざまな利用が期待されます。

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<南極からの8K映像リアルタイム伝送動画>

<昭和基地周辺から8K映像を伝送する観測隊員>

<Starlinkアンテナ設置の様子>

<映像品質比較(左:8K映像、右:2K映像)>

KDDIとKDDI総合研究所は、スペースXが開発したStarlinkを活用することで、南極大陸における観測隊員の業務環境改善や、極地研による南極域の研究観測業務や通信環境の設営、教育の高度化を支援し、地球温暖化などの地球規模の課題の解決に貢献します。また、スマートフォンを活用した8K映像のリアルタイム伝送システムの有用性検証や課題の抽出・改善を行い、通信回線の速度にかかわらず世界中どこからでも利用可能とすることで、現場作業のDX化の加速や高度化など、社会インフラの保全ならびに強靭性確保に貢献していきます。
極地研は、Starlinkによる広帯域低遅延の通信回線を生かし、これまで以上に高度な昭和基地観測への利用を進めると同時に、南北両極での観測のほか全球的な観測に活用し、現地隊員の負担を軽減しながら、国際的な連携観測のほか、宇宙飛翔体観測との連携の可能性を広げて行く計画です。

また、KDDIはこの実証実験の様子を2024年2月26日から2024年2月29日にスペイン・バルセロナで開催される世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2024」(以下 MWC)のKDDIブースで紹介します(該当項目へジャンプします注2)。

詳細は別紙をご参照ください。


<別紙>

■背景

南極には通年観測を続けている基地(越冬基地)だけでも約40あり、気象、大気、雪氷、地質、生物、海洋、宇宙物理などのさまざまな観測・研究を行っています。
日本の昭和基地には2004年にインテルサット衛星通信設備が設置され、観測データを常時国内に伝送することによる研究の進展や、隊員の福利厚生の充実化を目的として運用されてきました。そのほか、国内小中高校をはじめ海外の学校や、一般への情報発信などにも活用されてきました。当初は1Mbps程度の速度でしたが、2022年11月に最大7Mbpsまで増速し、活用の幅が一段と広くなりました。
インテルサット衛星通信を利用した映像伝送は2004年から行われていましたが、これまでの映像品質はHDTVが上限でした。昭和基地と国内の病院を衛星回線でつないで行う遠隔医療支援や、離れて暮らす家族との顔が見えるコミュニケーションにおいて、より高精細な映像が求められていました。また、教育目的の情報発信ニーズの高まりからも、さらなる映像品質の向上が求められていました。
KDDI総合研究所と極地研は、2022年11月11日にインテルサット衛星通信を活用して、南極域としては世界で初めて8K映像のリアルタイム伝送の実証実験を成功させました(該当項目へジャンプします注3)が、インテルサット衛星通信用アンテナがある昭和基地周辺だけでなく、離れたところに観測に行った際もすぐに連絡が取れる、気象情報がタイムリーに受け取れるなど、隊員の南極地域観測業務の安全とDX化につながる技術進化が期待されていました。

■本実証の概要

1. 実施時期

2024年2月13日

2. 実施目的

Starlinkを活用した高精細映像のリアルタイム伝送により、隊員の健康状態や生活の様子、昭和基地の自然や環境を高い臨場感で日本および海外に伝えるための技術を実証する。

3. 検証内容
  • 昭和基地における映像伝送機器利用のための検証
  • 受信映像品質の検証
  • 高精細映像をStarlink衛星通信回線で効率よく伝送するための、送信帯域制御技術およびパケットロス補正技術の検証
4. システム構成

昭和基地において「VistaFinder Mx」を搭載した8K動画撮影対応スマートフォンを用いて撮影・圧縮し、衛星通信回線を通じて伝送しました。その映像をKDDI総合研究所に設置した受信システムで受信・伸長し、8K映像としてモニター表示するとともに、安定した映像品質を維持できることを確認しました。

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<8K映像伝送システムの構成概念図>

KDDI総合研究所が開発した8K映像のリアルタイム伝送が可能な遠隔作業支援システム「VistaFinder Mx」は、国際標準の映像符号化方式H.265/HEVCコーデックを搭載しており、画質を維持したままデータ量を削減し、衛星通信環境でも安定した高品質な映像伝送を実現します。

5. 本実証分担者

服部 元(KDDI総合研究所)
河村 圭(KDDI総合研究所)
小原 朋広(KDDI総合研究所)
辻 智弘(KDDI)
岡田 雅樹(極地研 情報基盤センター)
藤野 博行(極地研 南極観測センター)

6. 昭和基地作業担当者

津町 直人(第65次南極地域観測隊越冬隊、KDDIから極地研に出向の上、南極地域観測隊に派遣)
中村 映文(第64次南極地域観測隊越冬隊、KDDIから極地研に出向の上、南極地域観測隊に派遣)
が実証実験用8K映像の撮影を担当しました。

本実証は、KDDI総合研究所と極地研が2019年から行っている「南極地域観測隊の記録と情報発信のための新しい映像伝送技術の開発研究と画期的な広報映像の社会発信のための実証実験」の一環です。


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