2022年3月24日
KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 高橋 誠、以下 KDDI)、株式会社アイロック (本社: 愛知県名古屋市、代表取締役: 古賀 琢麻、以下 IROC)、VIE STYLE株式会社 (所在地: 神奈川県鎌倉市、代表取締役: 今村 泰彦、以下 VIE STYLE)、合同会社レーシングヒーロー (本社: 東京都墨田区、代表社員: 紀平 啓佑、以下 レーシングヒーロー) は、脳科学とIT技術を組み合わせたブレインテックを活用し、脳の認知能力を高めることでeモータースポーツのドライビングテクニックの向上を目指す実証実験 (以下 本実証) を2021年12月14日から2022年3月11日まで実施しました。
本実証には、eモータースポーツ (注1) で活躍する宮園 拓真選手や佐々木 唯人選手など8名が被験者として参加しました。被験者のうち、脳の認知能力を高めるトレーニングを受けた2名について、シミュレーターでの筑波サーキット走行時のベストラップを比較し、ドライビングテクニックの向上について確認しました。
今後4社は、実車での走行テストなどを行い、将来的にeモータースポーツのプレイヤーがプロレーサーを目指すことができる環境の整備や技術開発を進めていきます。
<トレーニング前後でのベストラップ比較>
本実証の詳細は別紙をご参照ください。
脳の認知機能に着目した新しいドライビングスキルのトレーニング方法の開発を目的としています。
(1) ベンチマーク選手 (基準となる認知能力の分析対象選手)
区分 | 選手名 | 経歴 |
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リアルレーサー | 平良 響選手 | 2022年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 Kuoモビリティ中京 TOM'S320 38号車ドライバー |
eモータースポーツ出身リアルレーサー | 冨林 勇佑選手 | グランツーリスモ トッププレイヤー/レーシングドライバー
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山中 真生選手 | GOODRIDE MOTORSPORTS所属ドライバー
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eモータースポーツ | 山中 智瑛選手 | グランツーリスモ トッププレイヤー
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(2) 本実証への参加
役割 | 選手名 | 経歴 |
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トレーニー (トレーニング実施) | 宮園 拓真選手 | グランツーリスモ トッププレイヤー
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佐々木 唯人選手 | グランツーリスモ トッププレイヤー
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コントロール | 菅原 達也選手 | グランツーリスモ トッププレイヤー
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菅原 幹選手 | DIRT RALLY 2.0 トッププレイヤー
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浅賀 颯太選手 | iRacing トッププレイヤー
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山中 智瑛選手 | 同上。コントロール選手としても参加。 | |
山中 真生選手 | ||
匿名 | iRacing トッププレイヤー |
多様な認知能力の評価を行うテストをベンチマーク選手に行い、その結果に基づいてトレーニング対象とするスキルを特定しました。その後、トレーニー2選手に対しては、ニューロフィードバックも利用した認知能力のトレーニングを実施しました。
<ニューロフィードバックの仕組み>
IROCのドライビングシミュレーター「T3R Simulator」とレーシングシミュレーターゲーム「iRacing」で、筑波サーキットを5周したベストタイムをトレーニング前後で比較しました。
<佐々木選手の「T3R Simulator」でのドライビングの模様>
ウェアラブル脳波計「VIE ZONE」を利用したニューロフィードバックトレーニング (α抑制) に加え、ストループ課題 (佐々木選手) とポジティブ感情制御ニューロフィードバックトレーニング (宮園選手) を週1回、4週間にわたって実施しました。
<宮園選手による脳トレーニングの模様>
【結果1】認知課題成績の変化の確認 (GoNoGo課題の反応時間 (左) とストループ効果 (右))
トレーニングにより、特に佐々木選手の反応時間の短縮とストループ効果 (色名と色が一致していない際に反応時間が遅くなってしまう現象) の減弱に成功しました。
【結果2】レース成績の向上 (「iRacing」のラップタイム短縮)
トレーニング2選手は、筑波サーキットのラップタイムを65.496秒から64.886秒に0.61秒短縮することに成功しました。(トレーニングを受けていないコントロール選手は、65.040秒から65.154秒+0.114秒、交互作用 F (1,6) =15.5402 p=0.007)
社名 | 役割 | 内容 |
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KDDI | プロジェクト全体マネージメント | 全体企画設計、各パートナーアレンジ・マネージメント、ビジネスモデル設計 |
アイロック | レーシングシミュレーター「T3R Simulator」の活用 | シミュレーター活用のサポート、仮設の設定やリアルドライバー視点での課題提起などトータルアドバイザー |
VIE STYLE | 脳波分析 | 脳波を測定し、ニューロフィードバックを経て脳のトレーニングプログラムを開発・実行 |
レーシングヒーロー | eモータースポーツ選手のマネージメント | e-Motorsports関連ディレクション等コンサル業務 e-Motorsports選手のアレンジ、ベンチマーク設定など |
株式会社トムス | ドライビングシミュレーター、実車トレーニングのサポート | トムス社製シミュレーターの活用 「フォーミュラカレッジ」でデジタルトレーニング実施後の実車トレーニング (実施予定) |
日本グッドイヤー株式会社 | 実車トレーニング時の車両提供など | 実車トレーニングのための車両提供、ヤリスカップカーでの走行機会の提供 |
インテル株式会社 | PC (CPU) の提供 | 脳波分析や選手のニューロフィードバックで使用するPCの構成検討・機材提供 (予定) |
(1) 認知機能の特定のためのテスト
認知/注意制御系 | [1] ストループテスト | 意味と色の干渉下で「色」を答える (抑制と特定の対象への注意制御) 課題 |
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[2] GoNoGo | 二つの円が提示され「黄色と赤」の刺激のみボタンを押してはいけない課題 | |
[3] マルチオブジェクトトラッキング | 12個のドットのうち指示された3個を12秒間追跡する課題 | |
感情制御系 | [4] アスリート向けの感情制御の尺度 | Emotion Regulation Questionnaire (注3)、emotion regulation strategies (注4) |
感覚運動系 | [5] 感覚運動適応タスク | アクセル・ブレーキ特性の異なる新しい車両に順応する能力を計測する課題 |
[6] Sensory Motor TaskにおけるSpeed-Accuracy Optimization | オブジェクトを操作し周回路を1周する課題 | |
[7] 自身運動情報 (速度) の知覚能力 | 自身の過去の速度を弁別する課題 | |
空間認知系 | [8] 空間把握 (記憶・自己位置) タスク | 空間記憶課題 |
(2) 個人の認知能力の評価
本実証で、トレーニー2選手 (宮園選手、佐々木選手) と、ベンチマーク選手を比較した際に、相対的に伸びしろがある認知機能は以下の通りとなりました。
宮園選手 | GoNoGo課題における反応時間、ポジティブな感情戦略 |
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佐々木選手 | GoNoGo課題における反応時間、ストループテストのストループ効果 |
(3) トレーニング方法の開発と実践 (週1回4週間実施)
[1] ニューロフィードバックによるα抑制トレーニング | GoNoGo課題の成績を高めることが報告されている (注5) α波 (8-13Hzの脳波成分) の抑制トレーニング |
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[2] ポジティブ感情ニューロフィードバックトレーニング (宮園選手のみ) | ポジティブ/ネガティブなエピソードを繰り返し想起し、その際の脳波データを基に脳情報解読器 (デコーダー) を学習させ、それを利用して本人がポジティブなことを想起している脳の状態を自ら作り出せるようにトレーニング |
[3] 課題の実施によるトレーニング (宮園選手: GoNoGo 佐々木選手: GoNoGo+ストループ) | 測定課題を実施 |