2020年8月5日
新潟県長岡市 (市長: 磯田 達伸、以下 長岡市)、独立行政法人国立高等専門学校機構長岡工業高等専門学校 (所在地: 新潟県長岡市、校長: 原田 信弘、以下 長岡高専)、KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 高橋 誠、以下 KDDI) は、5GやIoTなどの先端技術を活用したICT人財や起業家人財の育成による地域産業創出を目指し、「地方創生に向けた産業創造連携協定」(以下 本協定) を2020年8月5日に締結しました。
長岡市は、鉄工や鋳物、電子・精密機器など多様な「ものづくり企業」が集積する工業都市であり、人口26万7千人を擁する新潟県内第二の都市です。市内には4つの大学と工業高等専門学校があり優秀な学生を輩出していますが、地元への定着が課題であり、起業・創業や新技術の開発・活用支援、企業との実践的協働機会の提供など若者が魅力に感じる施策が必要となっています。
まちの未来をつなぐため、長岡市は、米百俵の故事で知られる教育文化を背景に、市内4大学1高専の知見と企業の技術力を活かし、人づくりと産業振興を目指す「NaDeC (ナデック) 構想」(注1) を推進しています。意欲ある未来の担い手の確保・教育、学生の起業・創業の支援、先端技術の活用による企業の生産性向上などにより、「長岡版イノベーション」の実現に取り組んでいます。
三者は本協定を通じて、長岡市と長岡高専が有する育成基盤に、KDDIが有する5GやIoTなど先端技術を活用したICT人財教育や、地方創生における起業家育成の知見を掛け合わせることで、次世代地域産業をリードする人財を育成し、地域産業のデジタルトランスフォーメーション (DX) (注2) の推進と新産業の創出を目指します。
【取り組み例】
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長岡のまちは、戊辰戦争と長岡空襲 (1945年) による2度の戦禍、2004年の中越地震など相次ぐ災いに遭いながらもその都度、「米百俵」の精神を受け継ぐ市民の力で復興を成し遂げてきました。「まちとは、人が興すもの。まちづくりは、人づくりから始まるのだ。」この思想は、日本海側随一の工業都市として発展し、現在も「米百俵の精神」として長岡に深く根付いています。
また、長岡の産業発展は、明治20年代の東山油田の開発を契機として、原油の輸送、掘削関係の機械類及びさく井機械の製造業に端を発します。その後、工作機械、精密測定器の製造業や鋳造業が興り、今日の工業都市・長岡となりました。
さらに、教育の面では、長岡技術科学大学、長岡造形大学、長岡大学、長岡崇徳大学の4つの大学と長岡工業高等専門学校を有し、最先端の研究を行う教員と約5,000人の学生を擁する学園都市の側面も持っています。
長岡高専は、国立長岡工業短期大学 (1961年4月1日創立) を前身とし、高等専門学校制度が発足した1962年4月1日に国立高等専門学校第1期校12校のひとつとして設置されました。
「人類の未来をきりひらく、感性ゆたかで実践力のある創造的技術者の育成」を教育理念として掲げ、科学技術の分野で創造力を発揮し、人類の福祉や地球環境にも配慮して社会の発展のため、コミュニケーション能力と国際的な視野を身につけ、地域や世界で活躍出来る人材の育成を目指しています。
2017年に、スマートフォンアプリの分析事業や共創事業で知られるフラー株式会社と最先端IT分野およびアントレプレナーシップ教育の実現に向けた包括的連携協定を締結し、学生に対するアプリ開発などの協働教育を実施してきました。そのフラー株式会社を創業した代表取締役CEOの渋谷修太氏も長岡高専のOBの1人で、フォーブズ30アンダー30に選出されるなど、そのアントレプレナーとしての活躍が注目されています。
中心市街地の再開発事業における地方創生拠点の整備に向け、平成30年度に、市内4大学1高専から「人づくり・産業振興」を目指す「NaDeC構想」が提案されました。市ではこの提案を受け、市内4大学1高専、商工会議所とともに「NaDeC構想コンソーシアム」を組織し、先行的な活動拠点として「NaDeC BASE」を開設しました。
現在、この組織と活動拠点をベースに、大学や高専が持つ知見と市内企業が持つ技術を融合させ、新事業や新産業の創出を目指す「長岡版イノベーション」に取り組んでいます。産学官金の関係者が集う「イノベーション・ハブ」をIoT、介護、AI、水の分野で立ち上げ、地域の技術シーズの活用と課題解決に取り組むほか、起業の機運醸成や事業実現を支援し、起業家を育成しています。
3年後の令和5年度には、再開発事業により「人づくりと産業振興」を総がかりで支える地方創生の拠点「米百俵プレイス (仮称)」が一部オープンします。市内4大学1高専とのイノベーション拠点、産業ビジネス支援の拠点、まちなか図書館などの施設に、大学や産業界、若者など幅広い世代が集い、交流することで、新しいビジネスの創出を促し、さらなるイノベーションの推進を目指します。
長岡高専では平成30年度から"KOSEN4.0イニシアティブ新展開事業"の一貫として「アントレプレナー育成プログラム」を設置しました。本プログラムでは、市内4大学1高専の連携によるNaDeC (Nagaoka Delta Cone) 構想、地域企業等との連携を通じて、学生のアントレプレナーシップ (起業家精神) を育成し、地域の新産業を牽引する人材の育成を目指しております。同プログラムを通じて、本校OBである渋谷氏 (フラー株式会社代表取締役CEO) をロールモデルとして、長岡高専の中にアントレプレナーシップが根付き始めました。その結果として、平成30年度には、在学中の学生がロボットの関節部分などに使われている減速機の開発・製造を行うベンチャー企業 (拾壱・ビッグストーン株式会社) を創業しました。また、在学中に構想を温め、本校卒業直後の令和2年度に完全オンラインで行うビジネスコンテストやインターンシップを提供するベンチャー企業 (株式会社プロッセル) を創業した学生も輩出しました。
KDDIは、これからも事業を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。このたびの取り組みは、「暮らしをつなぐ~次世代の育成~、~地方・都市の持続的発展~」に該当します。
KDDIは、SDGsの達成に向け、事業を通じて解決する社会課題の一つとして、地方創生および教育事業に取り組んでいます。人財育成、ICTを活かしたビジネスの知見やファンドを軸にした地域企業のサポートに加え、教育における地域格差を解消するための環境整備もあわせて推進していきます。地域や企業とのパートナーシップにより、サステナブルなビジネスモデルを構築し、課題を継続的に解決できる「地域の明日」を創っていきます。
<KDDIが目指す地方創生の姿>