2019年8月21日
株式会社KDDI総合研究所 (本社: 埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長: 中島 康之、以下 KDDI総合研究所)、KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長: 高橋 誠、以下 KDDI)、学校法人常葉大学 (静岡県静岡市、学長: 江藤 秀一、以下 常葉大学)、公益社団法人国土緑化推進機構 (東京都千代田区、理事長: 佐々木 毅、以下 国土緑化推進機構) は、鳥獣による森林被害の軽減のため、IoTを活用した森林管理効率化の実証実験 (以下 本実証実験) を、本年8月より開始します。
<本実証実験概要>
近年、日本における鳥獣による森林の被害面積は全国で年間約6千ha (注1) と言われており、林業に深刻な影響を与えるなど社会問題となっています。
静岡県内の植林地域においては、シカによる植林の食害被害が増加しており、防鹿柵による侵入防止などの対策が講じられています。しかし、防鹿柵はシカなどの動物による衝突や倒木などにより破損することがあります。そのため、防鹿柵の破損を発見し迅速に修復作業を行えるように、定期的な見回りが必要となっています。
近年は防鹿柵の監視業務の負荷を削減するためカメラによる遠隔監視も行われていますが、防鹿柵は広大な植林地域に設置されており、柵全体の監視には多数のカメラを設置する必要があり、機器費用、通信費用などの面で課題がありました。
これらの課題を解決するため、本実証実験では静岡県内の植林地域 (注2) にて、広範囲に設置された防鹿柵を低コストで遠隔監視する手法の確立を目指します。
具体的には、植林地域を囲う防鹿柵に、加速度センサー、並びに無線通信モジュールを搭載した振動検知センサーデバイスを一定の間隔で設置し、KDDI総合研究所にて考案した防鹿柵の振動原因 (動物の衝突、風など) をAI (機械学習) により推定する手法を検証します。
今回本実証実験を行う植林地域は携帯電話などのモバイル通信の通信エリア外であることから、収集した揺れデータをクラウドに送信するためのセンサーネットワークを構築します。揺れデータはセンサーネットワークと、モバイル通信が可能な場所に設置されたゲートウェイ装置を経由し、クラウド上のサーバーに送信されます。また、この植林地域は電力会社からの商用電源が届けられていないエリアであることから、振動検知センサーデバイスは省電力回路を採用しボタン電池で、センサーネットワークを構成する装置はソーラー発電で動作し、商用電源のない場所でも常時監視することが可能です。
今後、本実証実験を通じて取得した揺れデータを検証し、振動原因の推定精度の改善を継続していくとともに、アラーム発報など実監視業務への適用性を検証していく予定です。
詳細は別紙をご参照ください。
実験システムは、防鹿柵に設置する振動検知センサーデバイス、センサーデバイスから送信される揺れデータを集約するアグリゲーター装置、LTEモジュールを内蔵し揺れデータをクラウド上のサーバーに送信するゲートウェイ装置、および揺れデータを蓄積するデータベースから構成されます。
<システム構成図>
開発した振動検知センサーデバイスは電池消費量を削減するため、振動を検知した時のみ無線通信モジュールを稼働し、約13秒間分の揺れデータを送信します。また屋外で使用するため、樹脂被膜による防水加工、および加速度センサーへの遮光対策を施しています。
<振動検知センサーデバイスの概要>